4日、4度目の防衛戦を判定で勝利した新井田豊チャンピオン。

「勝ちに徹しつつ、プロとしてのアピールをしたい」
リップサービスの極めて少ないチャンプが、今回の試合前にこう語った。

相手のビデオが入手できず、右か左かもよく分からない。試合前に発熱、前回よりも胸囲がアップしているにも関わらず、計量では500gもアンダー…。

KO決着も期待していたが、不安要素が重なったため深夜のテレビ中継を待てず、試合が終わっただろう時刻にワールドボクシングの編集長に電話をかけ、結果を聞いた。

相手のロナルド・バレラはスイッチするタイプだった。

ラウンド中に何度もスイッチし、その仕方も自分の武器をわきまえていて“上手い”!
注意するのは右のストレートとアッパー、サウスポー構えの右フック。
明らかに右利き。

サウスポースタイルの時の左ストレートは特別スピードもなくバランスを崩しやすいのだが、リーチがあり、懐深く、とてもイヤラシイ出し方で、新井田はカウンターをなかなか取れない。


新井田が突破口を開けないもう一つの理由に、バレラの「打たれ強さ」がある。バレラの場合、「身体の頑丈さ」と言ってもいい。

いいタイミングで新井田のパンチが入っても、バランス一つ崩さなかった。テレビではよく分からなかったが、きっと表情(目の色)も全く変えなかったのだろう。
これは非常にやりづらいタイプだ。

私は試合を見るとき、インターバルの様子をよくみる。
表情や息づかい、セコンドの指示や様子、メンタル面まで読み取ろうとする。

6R終了のインターバル、新井田の呼吸が荒くなってきた。
ラウンド終了間際にラッシュをかけることの多い新井田にはよくあることだが、今日はコーナーに戻る足取り、椅子にドッカリと腰掛ける動きなどから、疲労感がでている。
(やはり調整が万全ではなかったのか…)

ロナルドバレラにとっても、今まで戦った選手の中で新井田は一番やりにくく、パンチをあてられなかった選手だったはずだ。
12R戦った後の新井田の顔に傷はなかった。

試合に備え、新井田は「力の抜けたパンチ」を課題にして練習してきたようだが、今回は活かせなかったようだ。
パンチが“走っていない”、“抜けていない”感じが確かにあった。

減量など、調整がうまくいかなかったのなら、「力の抜けたパンチ」は出せなくて当然だ。
また、胸囲が大きくなっているのが、ベンチプレスなどのパワーアップで大きくなっているのなら、これは問題だ。

軽量級の選手がKO率アップを狙ってビルドアップすることがあるが、「パンチが走らなくなる」一番の原因であり、「倒せない」という逆効果になることが多い。

今回の新井田チャンピオンの防衛戦を見て、すっきりしなかったファンは多いかもしれない。
しかし、新井田は今後、安定王者として防衛を重ねていく素質があり、毎回自分のボクシングスタイルの向上に課題をもって練習に取り組んでいるので、徳山チャンピオンのごとく防衛を重ねるたびに評価は上がっていくだろう。

イーグル、マヨールなど、ミニマム級のライバルは日本にいる。
レベルの高い、ビッグマッチが見てみたい。

『ボックスファイ』