西岡利晃VSヘスス・ガルシア戦の解説をした。
西岡にとっては5度目となる世界挑戦にむけての前哨戦となる。

こういった前哨戦で、私が世界を狙える選手かどうかを見るポイントとして一番重要視することは、「格下のパンチを絶対にもらわないこと!」だ。

格下のパンチをまともにもらう選手がいる。
「ラッキーパンチをもらった…」「相手が捨て身で来たからもらった…」「つい油断した…」など、どれも言い訳でしかない。

相手が世界チャンピオン、いや世界ランカーのパンチ力ならKO負けしていたような試合をする選手には、世界戦のリングに上がってもらいたくない。
悲惨な結果が見えているから…。


前哨戦(格下相手の試合)の理想としては、強引に攻めるでもなく、相手のパンチをことごとく空振らせ、前に出ても後ろに引いても自分のパンチを当て、冷静沈着でいて主導権を握り続け、機を見て倒すべきところできっちり倒す…。

この日の西岡は、これらすべてをやり通した。
しかも、ラストは豪快なワンパンチKOで決めた。

ここ何試合か、西岡のボクシングが変わってきた。
“一皮むけた”という言葉がいいのだろうか。
スピード、テクニック、パンチ力など、これまでも世界レベルのボクシングであったことは言うまでもないが、「ここでジャブ」、「ここは相手をいなして」、「今はプレッシャーをかけるべき」…という瞬時の駆け引きや試合運びの部分で、ほぼ完璧といえるデキである。

これは、同じ解説者のセレス小林くんも同意見である。

エドウィン・バレロ、長谷川穂積などが、世界戦の公開スパーリングで大勢の記者たちに囲まれてフラッシュを浴びているなか、一人黙々と練習をしていた西岡を思い出す。

家族もでき、精神的にも明らかに逞しくなった西岡に、ぜひもう一度世界戦のリングに上がってもらいたい。