JCBホールこけら落とし興行第一弾!!

榎洋之VS粟生隆寛、東洋と日本のタイトルをかけた12回戦。
そのアンダーカードで下田昭文VS山中大輔の日本タイトルマッチ10回戦。

どちらもオーソドックス対サウスポーの試合。
だが、内容は対照的だった。


下田・山中戦では、挑戦者の山中がサウスポー対策をしっかりとっていた。

山中のトレーナーが内藤大助もみており、山中の動きに内藤チャンピオンの動きが重なって見えることが多かった。山中本人も内藤の動き(サウスポー対策)を学んだのだろう。

サウスポーのジャブの軌道よりも外側(低め)に頭を持っていって右ストレートを当てる。
さらに変則的に右を上下、オーバーハンドと打ち分け、それを突破口に左右フックの連打に持ち込む…。

また、距離感の良い下田に対して、足を踏み変えて(スイッチして)まで前に出ながらフックを振る…。

チャンピオンの下田は、山中が挑戦者でありながら“引きのボクシング”で組み立てたことが、やりづらかったらしい。
引いて引いてロープを背負い、時には頭を低くして左右フックで突進する…。

結果は判定で下田の勝ち(3-0大差)。
山中は挑戦者でありながら下がり続け、結果判定負け…と聞くと、消極的だったと思われるかもしれない。
しかし山中は練習の成果を出そうと闘志を燃やし、精神的にも充実した素晴らしい戦いだった。この引きながらの闘志が下田を苦しめた。
試合後、勝った下田に対して「精神的にお前の負け!」という声が下田陣営の客席からとんだほどだった。

確かに、下田は素晴らしい才能とテクニックを見せたが、ダウンを奪ったことが逆に精神面で自分のボクシングにズレをうんだかもしれない。
ファンから「落ち着け!」コールが起きたほどだった。
下田には、山中に負けないほどの強い闘志があるが、広い意味での“精神的強さ”は、今後、世界に向けて必要だろう。

榎vs粟生戦。
リングに上った二人を見て、久しぶりに素晴らしい試合になる予感がした。
序盤は予想した通りのジャブでの探り合い。
しかし、お互い相手を警戒したまま勝ちに行くことなく12ラウンドを終えた。

この試合で勝敗がつくことなく(ジャッジ3者ともドロー)、決着がつかなかったことは良かったと思う。
厳しく言えば、「この戦いの勝者が世界に!」…とは言えない内容であったからだ。

もちろん二人ともレベルが高くテクニシャンであり、サウスポーとオーソドックスの戦いである為にやりづらかったと思うが、このレベルで相手を崩して勝ちに行く戦いが出来ないようでは世界は遠い。

お互い指摘したい部分はあるが、再戦があるだろうから具体的なテクニック解説は伏せておくが、サウスポー対オーソドックスの戦いとしてのレベルが低かった。

この一戦は二人にとって重要な一戦。勝敗が大きく今後に影響する。
負けは許されず、何が何でも勝たなくてはならない。
だが、ギリギリ(小差判定)でもいいから「勝つ」ではダメだ。

世界挑戦者として、そのキップを手にするため、またファンの応援(納得)を得るためには、国内のライバルをしっかり、はっきり負かす必要がある。

終わった直後、この二人の“勝ちに行く戦い”を、もう一度見たいと思った。