越本チャンプが防衛失敗。
勢いのある挑戦者を封じ込めず、力尽きた。

4回戦で終わる選手もいる。一度も勝てずに引退する選手もいる。
プロテストに何度も失敗し、何年もかかってライセンスをやっと取得。すると「自分の夢は叶った」と言って、一度もリングに上がることなく合格発表の翌日にジムを去った、という話を聞いたこともある。

退き際で、その人のボクサー人生や、“人となり”が分かることは多い。


7回TKOでマットに崩れ落ち、担架で運ばれたその彼が、ドクターチェック後に控え室で行われた記者会見で、「この場(負けた直後の控え室)で言うべきかどうか…」と前置きしながらも、潔く引退を表明した。

どんな苦労も苦労と感じず、これまでは東洋のベルトを7度も防衛しつつ「絶対に世界チャンピオンになる」ということだけを考えて生きてきたはず。
今回はチャンピオンであるから「負けたら引退」という覚悟でリングに上がったのだろう。

悔いなく、潔く引退できる選手は、悔いのない練習をし続けてきた選手のばずだ。
妥協せず、自分に厳しく、全力で突っ走っていると、退き際はハッキリ見える。

ボクサー人生は短い。
納得してボクサー人生を終えられるかどうかは、頂点に登りつめたかどうかではなく、現役中のグローブをはめている時間に全力を出し続けたかどうかだ。

43戦39勝2敗2分
2敗はどちらも世界戦である。
素晴らしいレコードと潔さを残して、越本隆志の第2の人生がスタートする。