1Rから素晴らしかった!
完全にウィラポンをノンデかかっていた。
スピードでまさっていると余裕が持てる。長谷川は、自分の長所を存分にいかして戦っていた。
もう少し早くウィラポンはプレッシャーを強め、前に出てくると思ったが、長谷川はウィラポンがエンジンをかける前にさばき、パンチを当て、試合をリードし続けた為、攻勢に転じるきっかけを作れないまま長谷川のペースで進んだ。
ウィラポン得意の「強烈なプレッシャーの波状攻撃」の波が、いつまでたっても起らない。
しかし、さすがにウィラポン、中盤から前に出始めた。
7Rに長谷川は足を止めて打ち合ったが、私はワザとやっているのだと思ったので安心してみていた。
ウィラポンの強さが発揮するのは、前に出てプレッシャーをかけ、相手を疲弊させて仕留める戦法が取れたとき。
勇気のいることだが、足を止めて打ち合うと、ウィラポンは前進できないため「手を出すという“エンジン”」はかかっても、「プレッシャーをかけて前に出るという“ギヤ”」が入らない。
8Rは逆に足を使ってさばいてみた。
「接近戦も、アウトボクシングでも戦える」という所を見せた。
かなりの自信と余裕があったのか、それとも表情には出さず必死だったのか…。
さて、9R。
8Rで前に出させたので、ウィラポンのエンジンがかかり、ギヤまで入れさせてしまった。
ここからどう戦うか?
一気にウィラポンペースになる可能性があり、インターバル中に「もし、自分ならどう戦うか…」と考えても答えが見つからないまま9R開始のゴングが鳴った。
まったく、いち観客として「さあどうする?じっくり長谷川ボクシングを見せてもらいましょう!」と思った矢先の強烈な返しの右フック!
素晴らしかった。 見事なKO劇。
長谷川は、序盤にも左ストレートから右フックを返していたが浅かった。
8Rにウィラポンが前に出てくる展開をつくったから、これがカウンターとなり当たった。
もしこの返しのフックを打つために、前のラウンドで敢えてウィラポンに前進を赦したとしたら、長谷川は、恐ろしいポーカーフェイスだ。
ウィラポンは控え室で号泣、泣きつづけて取材が出来なかったらしい。
この日の為に、精一杯練習したんでしょう。だからこそ自分の限界に気付いたんでしょう。
数日前、ウィラポンVS西岡戦の第4戦目を観た。
体はハガネのように引き締まっていた。
ウィラポンは日本の宿敵でありながらも、ウィラポンのことを「嫌い!」という人は極めて少ない。
ボクシングファンだけでなく多くのボクサーからも慕われ、一時代を築き上げた素晴らしいボクサーだ。
長谷川穂積チャンピオンのメンタル面は凄い。
メンタル面といっても根性とか気合とかではなく、落ち着いた平常心ぶりが凄い。
雑念がなく集中し、自信をもって戦っていた。
ボクサーが自信を持って戦うには、厳しい練習をする、それしかない。
この試合を多くの若いボクサーが見ただろう。
技術的なもの以外にも、たくさんの学ぶ所がある試合であった。
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